 キールナは遠かった。
(ロヴァニエミ-キールナ)
ロヴァニエミの天気は、あまりにも曇りばかりが続く。
今後の天気予報も晴れマークは少ないようで、とにかく少しでも可能性がある場所に行きたい。
ロヴァニエミでオーロラを見るために、長居をしてしまっているうちにさすがに少し考えた。
このままただ待ち続けるよりは、北欧を回った後に安心した気持ちでオーロラを待つ方が効率的(&ラク)じゃないか・・・。
北欧を巡る間にもオーロラが見えるかもしれない。オーロラを見れさえすれば、もう北欧は終わりにしても良い気分なので、ともかく歩を先に進めることにする。
ロヴァニエミからスウェーデンに向かうには、まずバスで国境のトリニオという町に行かなくてはならない。この時期、フィンランド北部ラップランド地方のバスは便数が大幅減となる。路線からバスが消えてしまうことすら珍しくない。
それでもさすがに、スウェーデンに向かうバスがなくなることはない。ロヴァニエミからフィンランドの首都ヘルシンキに向かうのも、スウェーデンの首都ストックホルムに向かうのも、それほど大きな距離の差はない。それに、やはり冬だからといって交流が途絶えることは考えられない。
電車でスウェーデンまで行ければ便利だけれど、そういう便はない。
スウェーデンとフィンランドの線路は軌道の幅が異なるので、簡単には相互乗り入れができないからだ。
フィンランドの軌道幅は、ロシアと同じである。そんなわけで、ロシアからの直通列車はあるが、西側諸国とを結ぶ直通列車はない。西側諸国の中でも、移動にはとても不便な国なのだ。
トルニオでバスを降りるが、国境の町という雰囲気はまったくない。
どちらの方向がスウェーデンなのか分からないので通行人に聞いてみるが、皆アバウトに方向を指す。そう、国境のゲートなどあるわけでもないので地元の人には「そちらの方。」というイメージしかないのだ。
ともかくも不安を抱きつつ、指し示す人が最も多かった方向を目指す。いつの間にか国境を越えたのだろうか。越えていないのだろうか。まったく分からないがとにかく進む。
スウェーデンではまずバスターミナルを探さなくてはならないが、ありがたいことに
歩いてきた道は遠回りではなかった。
バスターミナルとすぐに分かったわけではないが、何台かのバスが停まっていたので向かってみる。途中、大きなスーパーを越え、2つ目の大きなスーパーであるCOOPを越える。福祉国家として有名なスウェーデンだけに、COOPがあるというのは納得してしまう。そういえば、スイスやリヒテンシュタインでもCOOPを見た。
ヨーロッパにあるスーパーのほとんどはチェーン店だ。国によってスーパーの種類が異なるが、どうも国の性格を「どんなスーパーがあるか」だけでも窺い知ることができる。
キールナ行きの直行便バスは1日に1便しかない。
乗り継いでいけば他に2便で行けるようだが、幸いにも次の便が直行便である。待ち時間は長いけれど、待つしかないかな・・・。
バスターミナルのインフォメーションのおじさんに、念のために電車でのキールナ行きの方法を聞いてみる。
「キールナに電車で行くには、近くの駅まではバスで行くのですか?」
「この町に駅はないよ。」
「それは分かっています。キールナに電車で行くには、近くの駅まではバスで行くのですか?」
「この町に駅はないよ。」
「(少し言い方を変えて再び聞く)近くの駅まではバスで行くのですか?」
「この町に駅はないよ。」
いくら聞いても同じ答え。
はっきり言って、言葉が通じていない。
(もっと短く単純に聞かないと駄目なのかな?)
「駅にはどのように行けばよいですか?」
「駅にはバスで行かないとならないよ。」
(はぁ〜、そうだよなぁ〜、それしかないよね。なんだかもう疲れてしまって、この人とは話す気力もなくなってしまう。)
近くで女性がバスを待っているので、そちらに声をかける。
「次のバスは駅まで行きますか?」
2時間後のバスはキールナに向かう。1時間後のバスは駅に向かうのだろうか。
ともかくバスの便が少ないので、乗り遅れたりしたらさらに数時間待たなくてはならない。
「行きますよ。」
「キールナに行くつもりですが、駅まで行って電車で向かうのとバスで向かうのはどちらが早いと思いますか?」
「・・・。確かじゃないけれど、バスのほうが早いと思う。」
さらにもう少し話をして、やはりバスのほうがラクだし、早いような気がして素直にバスを待つことにする。
お金がないので近くのATMを探し、お金を下ろさなくてはならない。
インフォメーションのおじさんにかかわると面倒そうなので、ともかく外に出る。ガソリンスタンドに人がいたので聞いてみる。
「近くにあるATMってどこですか?」
「・・・。」
ああぁ〜、英語が通じない!!
フィンランドではこんなことなかったのに、スウェーデンに入ったとたんにコレ!?
旅行中に世界各地で出会ったスウェーデン人のイメージから、英語が話せない人などほとんどいないと思っていた。私の運が悪いのか、それともスウェーデン人はフィンランド人よりも英語が話せないのか?
ともかく小さな町のメインストリートを直進し、なんとかお金を確保する。これで安心してバスを待つことができる。
バスに乗り込むと、あとは白い世界を進むだけ。
空も曇っているし、雪も降っているし、大地も雪で真っ白。
道路沿いには針葉樹林が並び、それらにも雪が積もっている。
さすがに北極圏に人は少ない。
町はほとんどなく、道路はきれいに整備されているようだが、ただひたすら針葉樹の間を縫っていくだけ。ずぅ〜っと同じような景色が続くし、昼も3時になる頃には日も暮れてしまうので、車窓を見ているのもまったく面白くない。
バスは郵便物の配達もかねているのだろう。たまに町を訪れると、必ずどこかを訪問して荷物を届ける。スイスやリヒテンシュタインなどと同じように、郵便配達車が路線バスに発達したのだろうか。
真っ暗な17時、吹雪の中ようやくキールナに到着。
朝6時にロヴァニエミを出発したので、ずいぶんと時間もかかったし疲れた。やはり北極圏は不便な地だ。
●人気の地はホテルも満室。(キールナ)
オーロラ研究所もあるキールナ。
キールナやさらにノルウェー側にあるアビスコは、オーロラの観測地として有名だ。日本人もたくさんいるし、西洋人もたくさんいる。町の規模もそこそこあり、特に不便なく滞在できそうではある。
(ロヴァニエミに長居せずに、もっと早めにキールナに移動しても良かったかな。)
まず閉まる直前の観光案内所に向かい、地図をもらう。ホステルの場所も聞く。
キールナには2軒のホステルがあるようだ。
まずはガイドブックに載っていたホステルに行く。
「・・・なんで勝手に使うんだ!!」
「すみません。」
「・・・!!!」
宿のオーナーらしい人が客を怒鳴っている。
しかも内容はたいしたこととは思えない。
洗濯機を勝手に使ったとかそんな話。客をそんなことで怒鳴るなんて考えられない。
普通に注意したりするのは良いと思うけれど、どうもここに滞在しても快適に過ごせそうはない。
「泊まりたいのですが、ドミトリーは空いていますか?」
「予約がないなら空いていないよ・・・。でも、ちょっと待って。シングルに予約があるけれど航空券を持っていなかったらしいから電話して確認してみる。」
「・・・いえ、結構です。もう1軒のホステルに行ってみます。」
先ほどの怒鳴っている様子を見ていたので、とても無理をしてまで泊まりたくないと思ってしまった。
もう1軒はユースホステル。
北欧のユースホステルは全般に質が高いようだ。きっと、キールナのユースホステルも期待できるだろう。
「泊まりたいのですが、ドミトリーは開いていますか?」
「今は満室ですよ。」
「シングルはどうですか?」
「今はホステルは満室で、ホテルしか空いていないわ。」
北欧の市内にある多くのユースホステルは、中級ホテルや高級ホテルと併設している場所が多い。キールナもそのようで、ホテルだけはさすがに空いている。
値段は790SEK。
なんと12000円以上もするのだ!!
先ほど訪れたホステルでは、シングルが空いているかもしれない。
でも・・・あのオーナーのホステルには泊まりたくないと思ってしまう。
「分かりました。ではホテルでお願いします。」
ベッドルームが2部屋!!
シャワーとトイレが別室!!
ソファセットもあるし、もちろんTVも、暖房も、インターネットのワイアレス接続も可能、窓も大きい。
こんなに良い部屋に泊まるのは、この旅の中でも初めて!!
誰かと一緒だったらもっと良い部屋を堪能できるのに。
そんな残念さもあるが仕方がない。
ホテル客用の専用キッチンや、すべての設備が快適にできている。
さすがに高いお金を払うと快適さが違うなぁ〜。
キールナのホステルが混んでいるので、トロムソなどノルウェーのホステルの空き状況も確認した。・・・すでに12月まで空きはなし!!
はぁ〜、さすがにオーロラの見える地域は11月下旬からクリスマス、そしてしばらくの間はずっと混んでいるようだ。
ホステルですら4,000円くらい普通に取られる。
そのホステルに泊まれなければ、10,000円ほどは覚悟しなくてはならない。北欧は、その中でも特に北極圏は、本当に節約旅行者に厳しい土地だ。
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